「秒速5センチメートル」

秒速5センチメートル 通常版 [DVD]

秒速5センチメートル 通常版 [DVD]

声の出演:水橋研二 近藤好美 尾上綾華 花村怜美
監督:新海誠


「桜花抄」「コスモナウト」「秒速5センチメートル」の短編連作アニメーション。
約一時間という短い上映時間ですが、その中にたくさんの失ってしまった気持ちが
詰まっていた映画でした。


転校を重ねる中、東京の小学校で出会った貴樹と明里の再会を描いた「桜花抄」
転校先の種子島での生活を、貴樹の同級生、花苗の視点から描いた「コスモナウト」
大人になった二人のすれ違う生活と、失った様々な想いを昇華させるかのような「秒速5センチメートル



桜花抄、は栃木が舞台です。明里ちゃんの転校先が岩舟。と言う事で私にはなじみの深い
宇都宮線や、小山駅が本当に忠実に描かれていた。
幼い気持ちの高まりと、希望。
雪の景色がとても美しく、儚い想いがまるで本当に続くかのような。
三編の中でどれが好きですか?と聞かれたら。
多分、私は「コスモナウト」を選ぶ。
花苗ちゃんのあの、もどかしいまでの気持ちと、踏ん切れない気持ち。そして、先が分かってしまったけれど
諦めきれないあの切なさと苦しさ。
忘れられない、気持ち。
種子島の美しい景色と夜空と、胸が張り裂けそうなくらい切ない心が自分の中にすっと流れこむ。
この気持ちは、その時を今、生きている若者よりも。
その時を過ぎてしまった、私達、大人の方がきっと胸に迫る。
戻れないことは分かっているけれど、どうしようもなく思いだしてしまうあの想い。
そこに、何かを望むつもりはない。
けれども、ずっと忘れたくないと思うような、想い。
感傷と呼ぶには躊躇われるような、切ない気持ち。


この作品は。そんな気持ちを思い出させてくれた。
私は、好き、と言う言葉を口に出せた。けれどもそれは叶うことはなかった。
あれから、何年も経つのに、折に触れて思い出す。
きっと一生忘れることは無いのだと思う。


とても美しい映像と、明るい未来に一歩踏み出せるような桜の季節。
願わくは、一人一人が抱える切ない想いが昇華され、秒速5センチメートルで落ちる桜の花びらのように
いつまでも美しく、心の中に残りますように。


忘れてしまえない気持ちは、誰にでもあるから。